
このところ、必ず一日に何回か大吉と福ちゃんのバトルが繰り広げられる。バトルといっても本気の喧嘩ではなく、じゃれて遊んでいるだけなのだろう。とはいえ、多頭飼いは初めての経験なので福ちゃんが来てすぐの頃は内心ちょっとハラハラしていた。

力量は大吉の方が圧倒的に強いと思われる。格闘技の世界では5キロ体重が違えばパンチ力に差が出るといわれている。MMAでも昔は体重差を無視した試合が多くあったが、近年では細かく階級分けされてきた。体重というのは闘ううえでとても重要な要素なのだ。その点、大吉は福ちゃんの倍以上ある。本気でやり合ったら大吉が圧勝するに違いない。

と思ったら、大吉はいい感じに手を抜いているっぽい。いい感じ、というのは「負けない範囲でほどよく有利な状態を保つ」というなかなか高度なテクニックを使っているようだ。これは観察していて気が付いた。ディフェンスは動物の動体視力のなせる技なのか、首から上の動きだけでほとんどの攻撃を見事に避ける。まるで全盛期のロイ・ジョーンズ・ジュニアのよう。

こうなってくると、今度は福ちゃんがムキになって大吉が怪我しないかというのが心配になってくる。まだ犬歯が仔犬仕様で尖っているので、本気で噛みついたら刺さってしまう。実際に白熱してきた福ちゃんを見ていると、ガウガウいいながらお前それ本気でいくつもりやろ的な気迫が感じられることがある。

だから最初の頃は白熱してくると「お前ら、ええ加減にせい!」と止めに入っていたが、無視していてもそのうち勝手に終わっているので最近は放置している。主に福ちゃんがちょっかいを出して大吉がそれに付き合っているのかと思いきや、逆に大吉の方から福ちゃんをおちょくっていることもある。そうやって福ちゃんをけしかけておいて、最終的には仔犬特有のしつこさをうざがったりもしている。

わりと見ていて飽きない。
<お知らせ>
『犬のはなし』更新されております。
福ちゃんが来てからの話はもう少ししてからアップされるはず。