家にずっといると気が滅入るので誰か飲みに誘おうとしたら、ノートパソコンの連絡先が消えていた。恐らくiPhoneが勝手に削除したと思われる。仕方なく、仕事部屋の引き出しのどこかにしまったはずのメモを探していると、「お腹空いたでしょ、これ食べて」とデスクトッピーがオニオンサラダとセロリの乗った皿を目の前に置いた。気がついたら、財布を握りしめて家を飛び出していた。
それはさておき、いよいよ今日は本番だ。あれはたしか高校一年の終わり頃だったろうか、今はもうない大阪府立少路高校の廊下だった。休憩時間にふらふらしていると、前から見知らぬ男が近づいてきて、いきなり「なぁ自分、フルアコ持ってるらしいやん」と馴れ馴れしく話しかけてきたのだ。ちなみに、フルアコとはギターの種類でフルアコースティックの略だが、立派なエレキギターだ。
当時、そんな渋いギターを持っている高校生は珍しかったのだろう(でも持っていたのはコピーモデルだった)。その男は羨望の眼差しを浮かべながら、あれこれ質問をぶつけてきた。なんだこいつはと思ったが、聞けば男もフォークギターを持っているという。「けっ、フォークかい、こっちはエレキやもんね」と心の中で勝ち誇ったのを覚えている。思えばそれが出会いだった。
あれから25年。まさか遠く離れた東京の地で、その男の40歳の誕生日を祝う
『ライブ』でギターを弾くことになろうとは。そして「リハは一回で大丈夫か?」とか「なるべくお前が弾きやすそうな曲選んどいたから」と心配される関係になるとは、夢にも思っていなかった。

そんなわけで、今日はそれなりに頑張ります。